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団員が語る! 第14回定期演奏会曲目徒然記

 今回、文京オケの演奏会にしては珍しく<ロシア音楽の魅力>というタイトルが付けられました。ロシア音楽といえば親しみやすいメロディ、土臭さ、感情のバクハツというイメージがあると思います。より当演奏会をお楽しみいただくために、団員達の曲への想いを紹介します。
1.ストラヴィンスキー:管楽器のための交響曲
 日本語の曲名として、原題の"Symphonies of Wind instruments"をそのまま(でもないけど)「管楽器のための交響曲」とする場合が多く、文京オケでもこれに倣ったのですが、本当は「待った」をかけたいところです。
 なぜなら、ストラヴィンスキーは一般的な「交響曲」の意味でSymphonies、を使っていないからです。ここでは1曲なのに、"Symphonies"と英語の複数形を使っています。Boosey & Hawkes版のスコア前書きによれば、Symphonyの元々の意味である、「音が響きあうこと」を意図しているとあります。いろいろな管楽器の様々な音色が、ストラヴィンスキーにより混ぜ合わされ、奏でられる「状態」を表している題名に思えるのです。そこで日本語としては、「管楽器による‘シンフォニーズ’」が適当なように思います。
 よって、ベートーヴェン、ブラームス、そしてラフマニノフなどと同様な「交響曲」を期待すると、かなり肩透かしな曲に感じられるでしょう。ストラヴィンスキー自身、次のように述べたそうです。

「私はこの曲がすぐに成功するとは期待していなかったし、実際期待できなかった。
 この曲は一般聴衆が魅力的に感じる要素や、これまで親しんでいる要素を全く持って
 いないから。
 これは短い祈りが繰り返される厳格な儀式のようであり、この音楽は聴衆の満足や
 情熱の喚起を求めているのではないのです」(出典はこちら

 ぜひ当日は、耳と心を開いて、その場に聞こえる交響音たちをそのまま受け入れてみてください。きっとストラヴィンスキーならではの世界が見えてくることでしょう。

 さて話は変わり、この曲のテンポ指定もなかなか興味深いものです。

 曲中では、Tempo I, Tempo II, Tempo IIIの3種類が指定されます。
 しかも、Tempo IIIはTempo Iのちょうど倍、Tempo IIはその中間(つまりそれぞれ1.5倍ずつ)に設定されています。

メトロノーム指示では、4分音符が
  ・Tempo I = 72
  ・Tempo II = 108
  ・Tempo III = 144
という数字なのです。

 テンポが変わるときには、おなじみのPiu mosso / Meno mossoという表現が使われていますが、これにどのテンポに移行するかが追加されます。たとえば、Piu mosso (Tempo III)、Meno mosso (Tempo I)等です。つまりこの曲での指示は確実な「シフトアップ・シフトダウン」を意味し、常識的な「ここから少し早く・少し遅く」とはニュアンスが異なっているのかもしれません。

 今回の演奏会の他の2曲、ボロディンとラフマニノフは感情を噴出させるような音楽が要求されます。いわゆる「ロシア音楽のイメージ」がぴったりな曲です。それらに対して、この、まさにCoolな一曲が私たちの管楽器セクションによりどのように演奏されるのか? 書いている私も今から楽しみです。

Hr. C.S

2.ボロディン:歌劇「イーゴリ公」より だったん人の踊り
 原稿募集中・・・
3.ラフマニノフ:交響曲第2番 
  <対談>「ラフ2の魅力とは・・・!」〜ラフ2隊長、おおいに語る〜 

 文京オケの選曲では、「とにかくやりたい曲」がある人の推薦が重要視されます。具体的には、合宿の宴会で酔った勢いでみんなにプレゼンをし、いかに熱くその曲への想いを語れるかが選曲決定への大きなポイントになるのです。(それだけではないですが)
 うまく想いが伝わってその曲に決定されると、当人は「隊長」と呼ばれ、練習期間のモチベーション向上役を担うのです。
 そんな「ラフ2隊長」へのインタビューをお願いしました。

【聞き手】  今日はよろしくお願いいたします。まずは今回、長年の想いがかない、ラフ2の演奏が決定しまして、あらためておめでとうございます。ものすごくやりたい曲で、「やれたら死んでもいい!」と合宿での選曲の場でおっしゃっていましたが、まずはこの曲に強く魅力を感じるようになったきっかけから教えていただけますか?
【隊長】  そうですね。ラフ2に賛成いただいた皆様には深く感謝しております。この曲を知ったきっかけですが、大学生の頃(今から10数年前…)、大学オケでのホルンパートの1年後輩(男)に、「ラフマニノフの交響曲2番を一度聴いてみてくださいよ。感動で涙がちょちょ切れますから!!」と言われ、CDを借りたのがきっかけです。そのCDを聴いた途端、これまで聴いたことのないような、甘く、切ない、そしてメランコリックなメロディーの連続に、見事に打ちのめされたわけです。
 もう、頭の中が“ガビガビガビ〜〜ン!!”*ときて、その曲にイチコロになりました。

(*:合宿でこうプレゼンしたため、その後ホルンパートではガビガビさんと呼んでます)

【聞き手】 ・・・その、特にどこで“ガビガビガビ〜〜ン!!”ときたわけでしょうか?
【隊長】  もちろん、3楽章ですよ。出だしのクラリネットのソロは、とっても美しいですし、そのソロのあとは、じわじわと盛り上がって行くメロディー、じれったさを感じながらも、少しずつ、少しずつ高揚していくフレーズ(そこでスコアを取り出す隊長。もちろん高価かつ正統であるBoosey & Hawkes版*)、特に練習番号50から51の9小節目に向かっていく高まりの場面は、ホントに好きなところです。
そして、練習番号52から、ホルンに始まりコンマス・木管が交互に奏でるソロを聴くと、温かさに包まれた、何ともいえないシアワセな気持ちになります。

(*:合宿でのプレゼンは「見てください、このブージーのスコア。一体いくらだったと思います?」から始まったように思います。。。)

【聞き手】 (・・・うーん、プレッシャーだ(聞き手本人は1stクラリネット)。)隊長はロマンチストですね。でも結構主張はストレートだとも思いますが。3楽章はホントに美しいですから、きっとラフ2が好きな人は、3楽章が特に好き、という人も多いのではないかと思います。ところで、CDではどのオケ、指揮者の演奏がお好き、お薦めですか?
【隊長】  私はCDは何種類も持っておりますが、何よりも一押し、といえば、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、アンドレ・プレヴィン指揮*のCDですね。私が一番最初に聴いて“ガビガビガビ〜〜ン!!”と来たCDが、まさにそれです。私がホルン吹きだからかもしれませんが、このCDはホルンの音色がよく聞こえるんですよ。それと、全体のテンポも好きですしね。
(*:プレヴィンは、長いためにカットが横行していたこの曲のカットなし演奏の先駆者ともいえます)
【聞き手】  ところで、先日のN響の演奏会はいかがでしたか?
【隊長】  ええ、さすがN響ですね。技量の高い演奏でしたよ。私、オケの演奏会で初めて客席でパート譜面を広げながら聴きましたし、演奏の際のポイントを譜面にメモりました。そういう点で、あの演奏はとても参考になりました。
 ただしテンポが少々早めで、何だかソツなくあっさりした感じで、ヤケドしそうな熱〜い演奏を期待していた私としては、ちょっと物足りませんでした。
【聞き手】  そういえば、ヴァイオリンパートのY氏もラフ2ファンだそうですが…?
【隊長】  そうそう、Y氏には、N響のラフ2演奏会で会いましたよ。Y氏とは長年、文京オケ内でラフ2シンパを広めるための、つらく、厳しい(!?)地道な活動を共に行ってきた同志(!)でしたし、きっと、N響演奏会を聴きに来るだろうと確信していましたよ。後日、演奏の感想を聞いたら、私と同様のコメントでしたね。あっさり系のラフ2の演奏にはお互い魅力を感じないという点で意見が合いました。
【聞き手】  テンポも指揮者によって様々ですし、いろいろな演奏がありますよね。今回、初めてラフ2を文京オケで演奏する機会を得られたわけですが、演奏するにあたってはどのような演奏にしていきたいと思いますか?
【隊長】  そうですね〜。まずは音の強弱、リズムの強弱をはっきりとさせ、そしてテンポもある程度伸び縮みさせて、うねりを持たせた、文京オケならではの“情熱的な”演奏*をぜひしたいですね。

(*:指揮の松下先生も3楽章がお好きなようで、結構すごいことになってます)

【聞き手】  文京オケの中で、どのパートに頑張って欲しいですか?
【隊長】  この曲は、弦楽器に美しいメロディーが満載です。特に弦楽器パート全体で、大いに“歌って”もらいたいですね。とにかく、単調な演奏だけにはしたくないものです。
【聞き手】  そうですね。弦楽器の美しいところが非常にたくさんありますよね。私もこの曲なら、弦楽器を演奏してみたいと思うことがあります。でも練習してみると、改めて難しい曲だと実感します。
 ぜひ、隊長のおっしゃるようなラフマニノフの魅力を出せる演奏にしたいものですね。きっとそういう想いの人は文京オケの中でも大勢いると思いますよ。
【隊長】  ぜひとも、ご協力お願いしますね。(聞き手に熱い視線を送る)
【聞き手】  (むむっ!)最後に、ラフ2を一言で表現すると、ずばり何でしょうか。例えば季節としたら何ですか?
【隊長】  ラフ2は一言でいうならば、“愛”です。“愛”に季節はありません!
【聞き手】  参りました!! ラフ2に対する大きな愛を強く感じます。ぜひその想いを演奏に込めていただければと思います。
 今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
隊長 :Hr. Y.T
聞き手:Cl. R.T (オケ通信係チーフ、隊長妻)

上のインタビューで登場した、ヴァイオリンのY氏からもメッセージが届きました。

<シンパ作りの話から>
 文京でラフ2を、が産声をあげたのはもう3〜4年前でしょうか。飲み会や合宿で話をするうちに、チェロのHさんや、オーボエのN(当時)さんなどがラフ2好きであることが発覚しました。(Hさんは結婚披露宴でラフ2三楽章の生演奏を実現させたばかりです。もちろん、演奏には隊長・私も加わりました)
 ここ数回の定演では、合宿における選曲のたびに、隊長殿が熱い思いを語られるとともに、バイオリンパートで私も小さな声をあげていました。しかし、演奏時間が長い、難しいなどの理由でなかなか実現しませんでした。このたびようやく、目出度く演奏する運びとなり、嬉しい限りです。
 練習にも、いつも以上に力が入っております。しかし・・・難しい。本当に難しい。皆さん、特に弦の皆さんゴメンナサイ。ここまでだとは思っていませんでした。
 しかし、せっかく演奏するのですから、いっぱい練習して、文京らしい情熱的な演奏を実現しましょう!

<隊員とラフ2>
 私とラフ2の出会いは、大学2年生の頃でしょうか、京都大オケの演奏会でした。ラフマニノフ自体が初めてだったこともあって、あまりの美しさ、いえ、長さに耐え切れず、寝てしまった記憶があります。
 その後、ラフマニノフのピアノ協奏曲2番を演奏する機会があり、周囲から交響曲も美しいという話も聴いていたので、CDを買いました。テミルカーノフ指揮、サンクトペテルブルク・フィル、今でも私の一番のお気に入りです。弦楽器が余りにも美しい・・・透き通るようなピアニッシモ、うねるフォルテッシモ。そして、独特の音色を持った管楽器も素晴らしいです。未だ古き佳きロシアが息づいているのがわかります。(ロシアに行ったことはありませんが。)
 大学院生の頃に、念願を果たして上記組み合わせの日本公演でラフ2を聴きました。感動。・・・(長いので感想文省略)・・・
 最も好きな楽章は1楽章です。シベリアの大地を想起させられ、背筋がゾクゾクっときます。(シベリアも行ったことはありませんが。)

<ラフ2のCD>
 実はあまり他のCDは聴いていません。
 文京でラフ2が決まった際、スヴェトラーノフ+ロシア国立交響楽団を買いました。バイブルよりもさらにロシア度アップ=金管がちょっとえげつない、という感じです。それから最近になって、隊長殿の聖典、プレヴィンを聴きました。聴いて納得、フレージングの美しさは抜群。もう一枚はオーマンディ+フィラデルフィア。Sさんから借りました。ロシア的な演奏からは距離がありますが、上手いです。

<まとめっぽく>
 松下先生がいつも仰る、音楽は「愛」。ラフ2は特に「愛」、そう思いながら隊員は演奏しています。
 そして文京らしい積極的な(決して「速い・走る」という意味ではありませぬ)演奏、情熱的な演奏ができることを楽しみにしています。
 ラフ2で燃え尽きましょう。

Vn. K.Y



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